2025.05.29-
業務の効率化や生産性向上を目指す企業が増える中、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入が注目されています。
海外と比べると、日本では急速にRPAの普及が進んでいるといわれています。しかし、「RPAは日本だけの流行なのか?」「海外の活用状況はどうなのか?」と疑問を持つ方も少なくありません。
本記事では、日本と海外のRPA市場の違いや導入事例、成功のポイントを解説します。また、RPA導入で失敗しないための注意点もご紹介いたします。
日本と海外の違いを把握し、自社に適したRPAを導入したいという方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
RPAは、ソフトウェアロボットを活用して、定型的な業務を自動化する技術(仕組み)です。
これにより、企業は業務効率化やコスト削減を実現し、従業員はより戦略的な業務に集中できます。
RPAは、人間が行うパソコン上の操作を模倣し、複数のシステムやアプリケーションを横断して作業を自動化することが可能です。多くのRPAツールは、プログラミングの知識がなくても、画面操作の記録やドラッグ・アンド・ドロップで自動化プロセスを設定できるため、導入のハードルが比較的低いことも特徴です。
RPAは、たとえば、以下のような業務を自動化することが可能です。
1.総務部・人事部|社内手続きや人事情報の処理
社員の勤怠集計、有給残日数のチェック、交通費申請内容の確認と集計など、手作業の多い労務管理業務を自動化。毎月繰り返される作業の負担が大幅に軽減され、ヒューマンエラーの抑制にもつながります。
2.経理部|請求・報告書関連の定型業務
各拠点の売上データを集計し、日次・月次の報告書を作成します。請求書の作成や送付準備、支払い予定の一覧作成も自動化でき、業務スピードと正確性の向上が期待できます。
3.生産管理・購買部門|システム間データ連携
在庫数や発注データの照合、基幹システムからの情報抽出、表への転記など、複数システムをまたいだ処理をRPAが代行。属人化していた業務を標準化し、担当者の負担削減につながります。
4.営業・カスタマーサポート部門|メールと情報対応の効率化
問い合わせメールへの自動返信や、営業報告書のフォーマット化、FAQ更新のためのデータ収集などにもRPAが活躍。顧客対応の質を保ちながら、業務量を削減できます。
このように、手作業で行われていた様々な業務をRPAで自動化することで、ヒューマンエラーの減少や作業時間の短縮が期待できます。
RPAは、もともと海外(英国)で誕生したため、業務効率化の手段として世界中で導入されていますが、日本と海外では、その導入状況や活用方法において、いくつかの違いが見られます。
本章では、日本と海外のRPAに関する5つの主要な違いを解説します。
日本では、特に金融業界や製造業のバックオフィス業務でRPAの導入が進んでいます。
たとえば、銀行や保険業界では、顧客データの整理や契約書の処理、データ転記などの定型的な事務作業をRPAで自動化し、業務の効率化やコスト削減を実現しています。
また、製造業では、部品発注や在庫管理、経理業務の自動化が進んでおり、これにより生産性の向上とエラーの削減が図られています。
海外では、RPAの活用がさらに広範囲にわたり、小売業や公共セクター、医療業界などで積極的に利用されています。
小売業では、オンライン注文の処理や在庫管理、カスタマーサービスの自動応答など、フロントエンド業務の効率化が行われています。公共セクターでは、行政手続きや市民サービスの自動化が進んでおり、医療分野では患者データの管理や予約システムの自動化などが進められています。
このように、海外ではRPAがより一層多岐にわたる業務に適用され、フロントエンド業務にも広がりを見せています。
日本では、製造業で長年活用されてきた産業用ロボットの発展を背景に、近年はRPAの導入(採用)も広がりを見せています。大企業を中心にRPAの活用が進み、主に金融業界やバックオフィスでの定型業務に導入される傾向があります。
ただし、ビジネスオートメーション全体の利用率で見ると、日本は海外と比べて遅れが見られます。世界的なRPAツールベンダーのUiPath株式会社の調査によれば、日本の自動化利用率は8カ国中で最も低く、15%に留まっていると報告されています。
前章の1.業種とRPAの使い方の違いでもご紹介しましたが、たとえば欧米諸国では、医療や小売、公共部門といった幅広い分野にまでRPAの活用が浸透・普及しており、領域の広さに加えて、RPAを含めたビジネスオートメーション全体の利用率についても、日本よりも海外の方が進んでいるという状況です。
出典:日本でのビジネスオートメーションの利用率は調査国中で最低、今後の活用に期待
(https://www.uipath.com/ja/newsroom/uipath-unveils-automation-generation-report)
国内では、WinActorやBizRobo!など日本企業が開発したRPAツールが多く導入されており、サポートの充実や日本語対応といった面で安心感があります。
これに対し、海外ではRPAツールのUiPathやAutomation Anywhereなど世界的なベンダーが市場をリードしています。これらの企業は、AIや自然言語処理(NLP)を組み込んだ高機能なRPAプラットフォームを展開しており、グローバル企業を中心に導入(採用)が広がっています。
このように、どの企業がRPAソリューションを提供しているかという点でも、日本と海外では選ばれる
ツールや活用のスタイルにも違いが見られます。
日本企業では、現場主導のボトムアップ型でRPA導入が進められることが多いとされています。
一方、海外企業では、経営層が全社的な視点で意思決定を行うトップダウン型のアプローチが一般的です。
このような意思決定プロセスの違いは、各国の企業文化や組織構造に起因しており、RPA導入のスピードや効果に影響を与える可能性があります。
日本企業では、各部門が独立して業務を進める傾向があり、RPA導入時に部門間の連携が不足し、全社的な効果が得られにくい場合があります。このようなことから、日本では、現場単位で違うRPAを導入したり、全社的にRPAの推進がうまくいかないというケースがあります。
一方、海外企業では、業務の標準化が進んでおり、RPA導入も全社的な視点で計画されることが多く、部門間の連携がスムーズに行われる傾向があります。
このように、企業文化の違いが、RPA導入に対する考え方の違いにつながっています。
日本のRPA市場シェアは世界全体の約25%を占めているといわれており、特に高いシェア率を示しています。 しかし、RPAは、日本だけでなく、世界中で導入が進んでいる業務効率化ツールです。それは、RPAの市場データからも読み取ることができます。
近年、RPAの世界市場は急速に拡大しています。
海外市場では、特に北米や欧州市場においてRPAの採用が加速しており、市場規模は急速に拡大しています。プレシデンス・リサーチ(Precedence Research)の調査によると、世界のRPA市場規模は2025年に228億1,000万米ドルに到達すると推定され、2034年には2,110億6,000万米ドルに成長すると予測されています。
この成長は、業務効率化や生産性向上を目指す企業が増加していることが背景にあります。特に、北米市場でのRPAの成長が著しく、2024年に約40%のシェアを占めています。
さらに、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが一般化し、業務のデジタル化が進んだこと、また、慢性的な人手不足が課題となっていることから、これらを背景に、人手不足を補う手段として業務自動化ツールであるRPAの需要が高まっています。
このように世界のRPA市場は今後も拡大していくことが予想され、日本だけでなく、海外でも一層RPAの活用は進んでいくといえるでしょう。
出典:プレシデンス・リサーチ株式会社 Robotic Process Automation Market Size, Share, and Trends 2025 to 2034(https://www.precedenceresearch.com/robotic-process-automation-market)
世界全体でRPA市場が成長を続ける中、日本はその中でも高い存在感を示しています。現在、日本は世界市場の約25%を占めるとされており、RPA分野でのシェア率は比較的高い水準にあります。
このようなデータから、「RPAは日本だけで流行している」と誤解されがちですが、実際にはグローバルでも導入が進んでおり、今後さらに市場が拡大していくと予測されています。
日本でRPAが急速に普及している背景には、少子高齢化による人材不足や、IT人材の確保が難しい現状、そして働き方改革の推進など、日本独自の社会状況・課題が関係しています。
本章では、それぞれの要因について解説します。
日本では少子高齢化が進行し、労働力人口の減少が深刻な課題となっています。内閣府の資料によれば、15~64歳の生産年齢人口は2020年の7,406万人から2040年には5,978万人、2065年には4,529万人にまで減少すると予測されています。
このような状況下で、企業は人手不足を補う手段としてRPAの導入を進めています。RPAは定型業務を自動化し、労働生産性の向上に寄与するため、人材不足解消の一助となっています。
出典:内閣府 人口減少と少子高齢化(https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/2zen2kai1-2.pdf)
RPAはプログラミングの専門知識がなくても操作可能なツールが多く、ITリテラシーが高くない従業員でも活用できます。これにより、企業内のさまざまな部門でRPAの導入が進み、業務効率化が図られています。
特に中小企業においては、専門のIT人材を確保することが難しいケースが多いため、RPAの容易な操作性は大きなメリットとなっています。
日本政府は働き方改革を推進しており、その一環として労働時間の短縮や生産性向上が求められています。RPAはこれらの目標を達成する手段として注目されています。
定型的な事務作業を自動化することで、従業員はより付加価値の高い業務に集中でき、結果として労働環境の改善やワークライフバランスの向上が期待されています。
業務効率化のためにRPAを導入したものの、なかなか活用・推進が進まない、という場合も少なくありません。RPAを導入する際、適切な準備や運用体制を整えることで効果を最大限に活用することができます。
本章では、RPA導入を成功させるための7つの重要なポイントを解説します。
RPA導入の第一歩は、導入の目的を明確にし、自動化に適した業務を選定することです。
具体的には、定型的でルールが明確な業務や、繰り返し頻度が高い作業がRPAに適しています。事前に業務プロセスを可視化し、どの業務が自動化に適しているかを判断することが重要です。
目的が定まったら、その目的に合ったRPAを選定しましょう。
RPAツールは多種多様で、それぞれ特徴や機能が異なります。導入目的に合わせて最適なツールを選定することが重要です。
たとえば、現場ユーザー自身で業務を自動化したいという場合には、プログラミング知識が不要で直感的に操作できるツールを選ぶなど、よりスムーズに導入が進むよう、RPAツールを選定しましょう。
RPA導入後の効果を最大化するためには、適切な運用体制の構築が不可欠です。具体的には、業務の自動化の開発や環境に合わせた運用ルールの確立、担当者の育成などが挙げられます。また、テスト稼働を経て、本格導入前にシステムの安定性を確保することも重要です。
RPA導入に際しては、データの取り扱いや業務プロセスの変更に伴うコンプライアンスやセキュリティリスクに注意が必要です。
社内規定見直しや、セキュリティ対策の強化を行い、安全な運用を確保しましょう。
RPAツールの中には、プログラミング知識がなくても短期間で習得できるものがあります。
直感的で誰でも使いやすい操作性を備えたツールを選ぶことで、担当者の負担を軽減し、スムーズな導入と運用が可能です。
導入後のトラブルや疑問に対応できるよう、サポート体制が充実しているRPAツールを選ぶことが重要です。
たとえば、RPA稼働中にエラーが発生し、社内で解決できない場合など、ベンダーからのサポートやコミュニティの存在は、問題解決の大きな助けとなります。
導入前に無料トライアルを活用し、実際の業務での適用性や効果を検証することは、非常に有効です。
これにより、導入後のギャップを減らし、運用開始がよりスムーズになります。
上記7つののポイントを押さえることで、RPA導入の成功率を高め、業務効率化や生産性向上につながることが期待できます。
RPA導入を検討する際は、導入目的や、自動化したい業務に適したツールを選ぶことが重要です。しかし、日本の企業(自社)にとってどのツールが最適なのか迷われる方もいるかもしれません。
本章では、特に日本企業での導入実績が高く、使いやすさに焦点を当てた、おすすめのRPA製品をご紹介します。
これらの特徴により、スモールスタートが可能となり、中小企業から大企業まで幅広いニーズに対応できます。WinActorは日本国内で高いシェアを持ち、2023年11月末時点で8,000社以上の企業に導入されています。
UiPathは、世界的に評価されているRPAツールで、以下の特徴を持ちます。
これらの特長により、UiPathは多くの企業で採用されています。
RPAツールは、それぞれ独自の強みを持ち、日本企業の様々な部門での業務効率化に貢献しています。
今回は、2つのツールをご紹介しましたが、自社のニーズに合わせて最適なツールを選定することが重要です。
RPAはさまざまな業務で活用され、作業時間の削減や人的ミスの防止に貢献しています。
本章では、製造業や建設業などの実際のRPA(WinActor)の導入事例をご紹介し、どのように業務効率化が実現されているのかを解説します。
藤田製作所様では、業務の効率化を目的としてRPAツール「WinActor」を導入しました。導入のきっかけは、同業他社の工場見学でRPAの活用事例を目にしたことでした。この経験から、RPAを活用すれば5年後、10年後に大きな差が生まれると判断し、導入を決定しました。
RPA導入にあたっては、事務作業の標準化やルール整備を先に実施し、システムのスムーズな運用を目指しました。
実際の業務としては、製品の受注から製造指示書の作成までをRPAで自動化しました。データの取り込みや帳票作成をロボット化することで、1日あたり約40分の作業時間を削減し、人為的なミスや印刷漏れも防止され、品質と効率の両面で成果を上げました。
結果的に1年間で54業務を自動化し、年間1,850時間の工数削減を実現しています。RPAによって業務の属人化を解消し、データの一元管理を推進したことで、大幅な業務効率化につながりました。
詳細な導入事例については、以下のリンクからご覧いただけます。
八千代エンジニヤリング株式会社様では、働き方改革の一環としてRPAを導入しました。同社の事務担当者は、入札・契約業務の繁忙期に長時間労働が発生しやすく、これを解決するためにRPAの活用を検討しました。
RPA導入時には、実務者への事前アンケートを実施し、業務のリストアップと優先順位付けを行いました。
具体的な業務として、国土交通省の発注見通しデータをWebから取得し、Excelに入力・保存、通知メールを送信する一連の業務をRPAで自動化しました。
手作業では1件あたり3分かかっていた作業が、RPAにより約1分で完了し、年間1,000件以上に対応していたため、合計で約2,000分の工数を削減する効果が得られました。
詳細な導入事例については、以下のリンクからご覧いただけます。
RPAは業務の効率化や人手不足の解消に大きく貢献するツールで、世界的にも活用が進んでおり、これからもRPA市場は世界規模で拡大していくと予想されています。
日本では特に、働き方改革や少子高齢化による人材不足を背景に、多くの企業がRPAを導入し、業務の自動化を進めています。
ただし、RPA導入を成功させるには、適切なツール選定や運用体制の整備が不可欠です。
本記事でご紹介したポイントを参考に、自社に最適なRPAの活用方法を検討してください。
RPA(WinActor)の導入を検討している企業に向けて、ヒューマンリソシアでは導入支援を行っています。業務の可視化から、運用体制の構築まで、専門のコンサルタントがトータルでサポートいたします。
「業務選定に悩んでいる」「導入後の運用が不安」といったお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
【よくあるご質問】
Q : RPAは日本だけで流行している技術なのですか?
A : いいえ、RPAは日本だけでなく、世界中で導入が進んでいる業務効率化ツールです。
日本のRPA市場シェアは世界全体の約25%を占めると言われています。そのため「日本だけで流行している」と誤解されることがあります。
Q : なぜ日本でRPAが急速に普及(ブーム)になっているのですか?
A : 少子高齢化による労働人口の減少
日本は少子高齢化により労働力不足が深刻です。RPAは人手を補う手段として注目され、定型業務の自動化によって生産性向上に貢献しています。
A :ITの知識が不十分であっても活用できる
RPAは専門知識がなくても扱えるため、IT人材が限られる現場でも導入しやすく、幅広い部門で活用が進んでいます。
A :働き方改革の推進
政府の働き方改革により、生産性向上や労働時間短縮が求められています。RPAは定型業務を自動化し、付加価値の高い業務への集中を可能にします。
Q : 日本と海外ではRPAの導入状況や活用方法にどのような違いがありますか?
A :1. 業種とRPAの使い方の違い
日本では金融や製造業のバックオフィス業務に多く使われていますが、海外では小売や医療、行政など幅広い業種や、フロントエンド業務にも活用が進んでいます。
A :2. 普及と採用率の違い
日本では、金融や製造業を中心に、主にバックオフィス業務でRPAの導入が進んでいます。ただし、ビジネスオートメーション全体の利用率で見ると、日本は海外と比べて遅れが見られます。海外では、幅広い分野にまでRPAの活用が浸透・普及しており、RPAを含めたビジネスオートメーション全体の利用率についても、日本よりも海外の方が進んでいるという状況です。
A :3. RPAを提供する企業の違い
日本では、WinActorやBizRobo!など日本企業が開発したRPAツールが多く導入されており、サポートの充実や日本語対応といった面で安心感があります。これに対し、海外ではRPAツールのUiPathやAutomation Anywhereなど世界的なベンダーが市場をリードしています。
A :4.意思決定の流れ:トップダウン型とボトムアップ型の違い
日本企業では、現場主導のボトムアップ型でRPA導入が進められることが多いとされています。 一方、海外企業では、経営層が全社的な視点で意思決定を行うトップダウン型のアプローチが一般的です。
A :5. 社内連携の仕組みとその違い
日本企業では、各部門が独立して業務を進める傾向があり、RPA導入時に部門間の連携が不足し、全社的な効果が得られにくい場合があります。一方、海外企業では、業務の標準化が進んでおり、RPA導入も全社的な視点で計画されることが多く、部門間の連携がスムーズに行われる傾向があります。
Q: RPAの活用は今後どうなっていきますか?
A : 世界のRPA市場は今後も拡大していくことが予想されており、日本だけでなく、海外でも一層RPAの活用は進んでいくといえるでしょう。
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