2024.12.16 -

業務効率化の手段として注目される「RPA」と「マクロ」は、いずれも定型業務を自動化するためのツールです。しかし、両者の間にはどのような違いがあるのでしょうか。
本記事では、両者の特徴や共通点、適した業務内容をわかりやすく解説。
さらに、RPAとマクロの組み合わせによる活用法もご紹介します。
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目次
RPAとは

RPAとは、「Robotic Process Automation」の略称です。定型業務を自動化する技術で、ソフトウェア上の「ロボット」が作業手順を記録し、繰り返し実行します。近年ではバックオフィスのデータ入力や定型レポート作成に活用され、効率化に貢献しています。
RPAの種類は、パソコン単位の「デスクトップ型」、サーバ内にロボットを構築して複数のパソコンや業務を横断して自動化できる「サーバ型」、クラウド上での作業を自動化する「クラウド型」の3つです。
これまでは決められた作業手順のみを対象としていましたが、AIやOCRと組み合わせることで、より複雑な業務への対応が期待されています。
マクロとVBAについて

マクロは、アプリケーション上での操作手順を自動化する機能です。
一般的に「マクロ」という時には、Microsoft Office Excelに代表されるように、ボタンを押下すると自動的に計算や印刷などが行われるといった作業の反復試行の場面で多く用いられます。
Excelには簡単なマクロ記録機能があり、プログラミング未経験者でも利用できます。
マクロ実行を可能とするために使用されているプログラミング言語が、VBA(Visual Basic for Applications)です。VBAはExcelやWordなどのMicrosoft Office専用の言語で、より複雑な処理やエラー修正をする際に使用されます。
RPAとマクロの違い

RPAとマクロには、どのような違いがあるのでしょうか。
本章ではRPAとExcelのマクロの相違点を表にまとめ、それぞれ詳しく解説します。
項目
|
RPA |
マクロ |
自動化の範囲 |
パソコン作業で使う アプリケーション全般 |
Microsoft製品内で可能 (Excel、Access、Wordなど) |
プログラミングの必要性 |
ツールによって異なるものの、 プログラミング知識が不要なものもある |
簡単な操作は記録機能で可能 より高度な設定は、VBAのプログラミング知識が必要 |
処理できる量とスピード |
大規模データに対応可能 ※ |
小~中規模データに適している |
導入・運用にかかる費用 |
製品によって異なる |
アプリケーションを導入済み であれば追加費用は不要 |
サポート体制の有無 |
有り(有料の場合あり) |
サポートは原則なし |
※状況に応じて使い分ける対応を行う場合があります。
■処理スピードを重視する場合
・マクロを使って作業を効率化します。
■マクロのプログラム内容が複雑で解読するのが困難な場合
・あえて処理速度を抑え、誰でも分かりやすいRPAを活用して、
更新やカスタマイズがしやすいフローを作成します。
自動化の範囲
RPAとマクロは定型作業を自動化するツールですが、自動化できる範囲に違いがあります。
ExcelのマクロはExcel内の操作のみが対象ですが、VBAを使えばMicrosoft Officeのアプリケーション同士でデータのやり取り・条件に応じた処理の切り替え・同じ作業を繰り返すループ処理などが実行可能です。しかし、VBAでもMicrosoft Office以外のアプリケーションやWEBツールとの連携はできません。
RPAはMicrosoft Officeに限らず、他のアプリケーションやWEBサイトを含めた操作を自動化でき、データ収集や異なるアプリケーション間の連携を横断的に実行できます。
プログラミングの必要性
マクロでは基本的な操作はマクロ記録機能で自動化できますが、VBAでの自動化や複雑な処理にはプログラミング知識が必要です。
RPAはテンプレートや直感的な操作で設定できてプログラミングの知識がなくても使用できるため、初心者でも扱いやすいでしょう。ただし、RPAでも複雑なシナリオを実行するときやトラブルの対応時はプログラミングスキルが役立ちます。
RPAは幅広いユーザーに対応できる一方で、VBAでの自動化はより専門的な知識が求められます。
処理できる量とスピード
マクロ処理のスピードはパソコンの性能に依存するため、大量のデータを扱う際に動作が遅くなったりフリーズしたりするリスクがあります。
RPAのデスクトップ型はパソコン性能に依存しますが、サーバ型やクラウド型はパソコンのスペックに左右されずに大量のデータを高速で処理できます。手元のパソコンが低スペックでも効率的に作業が行えるため、業務の生産性を向上させることができます。
処理量と速度の観点から、RPAは優れた選択肢と言えるでしょう。
導入・運用にかかる費用コスト
Excelのマクロは、既にExcelが導入されていれば追加費用がかからず基本的な自動化が可能です。ただし、VBAの専門知識がなく自動化作業を外注した場合、費用が数万円から100万円程度必要です。
一方でRPAは無料のものもありますが、ツールによっては月額数万円から年額100万円以上の費用がかかります。サーバ型やクラウド型のRPAは高額になる傾向がありますが、自動化できる範囲が広いため、導入前にしっかりと費用対効果を検討しましょう。
サポート体制の有無
RPAとExcelのマクロでは、サポート体制に大きな違いがあります。
多くのRPAのサービスは導入時や運用時のサポートを提供しており、ヘルプデスク・シナリオ作成などの支援があることが一般的です。また、トラブル発生時にはサービスを提供する会社に連絡することで迅速な解決が期待できます。
一方、マクロやVBAには公式のサポートが存在せず、問題が生じた場合は自力で解決するか、専門業者に依頼する必要があります。
サポート体制の有無やサポートの形式は、RPA導入時の重要な検討ポイントとなるでしょう。
RPAとマクロの共通点

RPAとマクロには、定型作業の自動化が主な共通点として挙げられますが、それ以外にもいくつかの共通点があります。
本章では、RPAとマクロの主な共通点を2つ紹介します。
導入する目的
RPAとマクロは、どちらもパソコン上での定型業務を自動化することで業務効率を向上させ、ヒューマンエラーや作業ムラを削減することを目的としています。
いずれも同じ作業をワンクリックで正確に実行でき、単純で繰り返しの多い作業の自動化に大きな効果を発揮します。これにより、時間のかかる大量のデータ入力や確認作業の効率化が可能になり、作業ミスや漏れを防止できます。
RPAとマクロを適切に利用できれば、どちらも『人手を使わずに、同一基準で成果を得る』ことに貢献するでしょう。
非定型の作業が苦手
RPAとマクロはどちらも定型作業の自動化に優れており、あらかじめ設定した手順を正確に繰り返すことで業務効率を向上させます。
しかし、非定型の業務や人間の判断が必要な作業には対応が難しいという制約があります。
問い合わせ対応など、状況に応じた柔軟な対応や思考を求められる場面には不向きです。
ただし、RPAはAIと連携することで非定型作業の一部にも対応できる可能性があり、今後の発展が期待されています。
マクロ(VBA)向けの業務
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マクロ(VBA)は、Microsoft Officeを中心にした業務の自動化、特にExcel内で完結するデータ処理や分析に強みを持っています。
請求書の作成や定型メール送信、データ集計やグラフ化などのシンプルな作業を自動化することで、業務の効率化が期待できます。
マクロは特定のアプリケーションに標準装備されており、追加費用がかからないため、複数のシステムを横断する必要がない業務や、大規模なデータ処理が不要な業務において、手軽に活用できる自動化手段として適しています。
RPA向けの業務

RPAは、複数の業務支援システムと連携して大量データを処理する業務に最適です。
たとえば、販売・生産管理システムなどの複数システム間でデータを効率よく扱いたい場合や、Excelだけでは完結しない作業に適しています。
大量のデータを扱う金融や小売業界の業務でも効果的で、サポート体制が充実したツールが多く業務の効率化に寄与します。
RPAにはプログラミング知識が不要なツールが数多くあり、技術に不安がある場合でも導入しやすいでしょう。
業務によっては2つの組み合わせも可能

RPAとマクロは得意分野が異なるため、併用することで自動化の柔軟性と効果が高まるでしょう。
たとえば、Excelのマクロでデータの加工や分析を行い、RPAで異なるシステム間のデータ転記を担うなどの使い方が考えられます。
特に既存のマクロを活用する場合、無理にRPAに移行せず両者を組み合わせる方が導入費用を抑えられます。
まとめ

RPAとマクロは、どちらも業務効率化に役立つ自動化ツールです。
RPAはプログラミング不要で幅広いシステムとの連携が可能であり、大量データの処理に向いています。一方、マクロは特定のアプリケーションで完結する作業の自動化に適しており、VBAのプログラミング知識があればMicrosoft Officeをより柔軟にカスタマイズすることが可能です。
自社業務に最適な自動化範囲を見極め、RPAとマクロの併用や使い分けを検討してみてはいかがでしょうか。
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