業務自動化は、生産性向上やコスト削減など、多くのメリットがあり、競争力を維持するための重要な戦略です。
多くの企業が取り組んでいる業務自動化ですが、自動化の方法にはさまざまな選択肢があります。自動化に適した業務や方法で導入しないと、期待する効果が十分に発揮されず、失敗する可能性があります。
本コラムでは、業務自動化の基本から、『自動化のメリット・デメリット』や『具体的な5つの自動化方法と作業例』をご紹介します。
目次
業務自動化とは、人が手作業で行っていた業務を、ツールやソフトウェアなどのITテクノロジーによって自動化することです。
業務の自動化により、作業にかかっていた時間やヒューマンエラーの削減が期待できます。
定型的な作業を自動化することで、人は人にしかできない、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。
業務の自動化と効率化は、どちらも業務の生産性を向上させるための手法です。
効率化は業務全体の見直し、自動化は業務プロセスの自動化になるので、自動化は効率化の一部ともいえます。
業務自動化の大きな目的のひとつとして、生産性の向上が挙げられます。
これまで人が手作業で行っていた業務を自動化することで、人間の労働力をより価値の高い業務へシフトすることが可能になります。
さらに、業務を自動化することで他にもさまざまな効果があります。
・ヒューマンエラーの削減
・品質の向上
・顧客満足度の向上
業務自動化を実行するツールやソフトウェアは、単なる効率化ツールではなく、企業全体の生産性向上と持続的な成長を支える重要な手段です。
近年、多くの企業で業務自動化の重要性が高まっています。
その背景には、労働力の減少や働き方改革など、さまざまな社会的・経済的要因があります。
企業の生産性を維持しながら人手不足に対処する方法のひとつとして業務自動化が求められています。
ここでは、業務自動化が求められる具体的な背景とその問題点について解説します。
少子高齢化は、日本の労働市場に大きな影響を与えています。
労働人口が減少する中で、人手不足に直面している企業も少なくありません。
人手が不足すると、企業の成長を妨げるだけでなく、働いている社員にも大きな負担がかかります。
限られた人材でも業務の生産性や品質を維持するために、業務自動化が求められています。業務を自動化することで、従業員の負担を軽減し、労働力不足を補うことができます。
働き方改革による労働時間の短縮により、従業員のワークライフバランスは改善されましたが、企業は業務量を減らさずに生産性を維持することが求められています。
そこで、業務自動化が大きく注目されました。業務を自動化することで、従業員は限られた時間内でより多くの業務をこなすことができます。
業務自動化は、企業が競争力を維持しながら、社員の働きやすさを向上させることにもつながります。
多くの企業で業務自動化の重要性が認識されています。
しかし、実際には「自動化が進まない」「導入に失敗した」というケースも少なくありません。
ここでは、自動化が進まない、または成果が出ないと感じる原因をご紹介します。
業務自動化を進めるためには、まず業務プロセスの詳細を把握することが重要です。
業務を自動化する前に「どの業務を」「どの手法で自動化するのか」をきちんと選定する必要があります。この選定ができていないと、自動化しても期待した効果が得られないだけでなく、業務プロセスが複雑化したり、新たな問題が発生したりする可能性があります。
まずは業務の把握を行い、その業務が自動化に向いているのか、プロセスの詳細をきちんと理解しましょう。
業務の把握は「業務自動化の最初の一歩」です。
業務自動化には、RPAやAIなど高度な技術や知識を要するツールもあります。
しかし、近年の人手不足により、専門知識を持つ人材を確保し、自動化プロジェクトを進めるのは容易ではありません。
新たな人材の確保や社員への教育・トレーニングには、時間とコストがかかります。
このような背景から、専門知識を持つ人材の不足も業務自動化が進まない要因の一つとなっています。
業務自動化は、企業に多くのメリットをもたらす一方、デメリットもあります。
初期投資や運用コスト、システムトラブル時のリスクなど、さまざまな点を考慮して導入を検討することが重要です。
自動化のメリット・デメリットを理解した上で、慎重に導入を進めることをおすすめします。
ここでは、業務自動化による具体的なメリットとデメリットを解説します。
業務自動化には多くのメリットがあります。ここでは、主な3つのメリットをご紹介します。
業務自動化の最大のメリットは、業務効率化と生産性向上です。
これまで手作業で行っていたデータ入力や帳票作成、請求処理などの定型的で時間のかかる業務を自動化することで、作業時間を大幅に短縮できます。
自動化により業務スピードが向上するだけでなく、人はより重要な業務に集中できるため、企業全体の生産性向上にも繋がります。
コスト削減も業務自動化の大きなメリットのひとつです。
これまで手作業で行っていた業務を自動化することで、必要な人員や作業時間を減らし、人件費を削減できます。
また、作業を外注化していた場合もその作業を自動化できれば、外注費を削減できます。
企業は、長期的なコストの削減効果を見込んで、自動化の検討・導入を進めることが重要です。
業務自動化は、ヒューマンエラーの削減にも大きく貢献します。
人が手作業で行う業務には、どうしてもミスが発生する可能性があります。特に個人情報や機密情報を取り扱う業務の場合、ひとつのミスが大きな問題に発展することもあると思います。
しかし、機械による自動化なら正確な処理が可能となり、ミスを最小限に抑えられます。
ミスや漏れが減少することで、業務品質の向上にもつながります。
業務自動化にはデメリットもあります。ここでは、主な3つのデメリットをご紹介します。
業務自動化には導入コストや初期投資の負担がかかります。特にRPAやAIツールなどを導入するには、ソフトウェアのライセンス費用やシステム構築費用が発生します。
また、自動化ツールを扱うために高度な知識が必要な場合は、従業員へのトレーニングコストがかかることもあります。
初期投資の負担はデメリットとして挙げられますが、業務自動化には長期的なコスト削減が見込まれます。自動化ツールの導入には長期的な視点で費用対効果を検討することが重要です。
業務自動化には、業務がブラックボックス化するリスクがあります。
自動化によって業務プロセスが不透明になり、どのように業務が行われているのかが把握しづらくなる可能性があります。
ブラックボックス化が進むと、問題発生時の原因究明が難しくなり、業務改善の新しいアイデアも生まれにくくなります。
こうしたリスクを避けるためには、自動化業務のマニュアル作成や、RPAやマクロで自動化するなら動作をわかりやすいように設計開発することが重要です。
業務自動化のデメリットとして、システムトラブルなどの不具合が生じることで業務が停止する可能性も挙げられます。
システムの障害や予期しないエラーが発生すると、自動化のプロセス全体が停止してしまいます。停止することで、業務が滞り、納期の遅延や顧客対応の遅れなどにつながります。
このようなリスクを最小限に抑えるためには、事前のリスク管理や対策が必要です。
定期的なメンテナンスや迅速なトラブル対応ができる体制を整えるなど、不具合が生じても業務を続けられるような対策を講じることで、被害を最小限に抑えられます。
業務自動化を実現するためには、さまざまな方法やツールがあります。
ここでは、代表的な業務自動化の方法を5つご紹介します。
それぞれの特徴や自動化の作業例、適した業務などを解説します。
マクロは、ExcelやWord、PowerPointなどMicrosoftやOfficeソフトで利用できる自動化機能です。
特にExcelで活用されることが多く、データの加工やシートの印刷などをプログラムしておけば、 ボタン一つで作業が実行されます。
営業部門で毎月の売上報告書作成を自動化できます。
別々のExcelファイルで管理している拠点ごとの売上報告書から必要なデータを1つのファイルに集約し、データを加工してレポートを作成することが可能です。
マクロは、Excelを頻繁に使用する業務の自動化に適しています。データの集計など個人レベルの作業も 自動化できるのが魅力です。
一方で、自動化できる範囲はExcelなどのOfficeソフト内に限られるため、Office以外の複数のシステムやアプリを横断する作業は自動化できません。
RPA(Robotic Process Automation)は、仮想知的労働者とも呼ばれています。パソコン内で行われる 定型業務の自動化を得意としたソフトウェアです。
マクロなど、単一アプリ内のみで自動化を行うツールとは異なり、RPAなら複数のアプリケーションを 横断した作業が自動化できます。
受発注業務の自動化が可能です。
RPAで見積システムから抽出したCSVデータを加工後、基幹システムへ登録して発注するといった複数のシステムやExcel処理の一連の流れを自動化できます。
RPAは、データ入力や反復作業など定型的でルーチンワークが多い業務の自動化に適しています。
一方で、業務フローが頻繁に変わるものや複雑で判断が必要な業務などには不向きです。
AIツールは、人工知能技術を利用し、高度なデータ分析や予測、文章生成をスピーディーに行います。 AIには予測系AIや識別系AIなどさまざまなタイプがありますが、近年ではChatGPTなど文章生成AIも 大きな話題となりました。
生成AIを活用した場合、マーケティングの一部業務を自動化できます。
AIにプロンプト(命令文)を入れるだけで、代わりにメールやSNSの原稿、マーケティング戦略の立案など、たたき台の作成をAIが行ってくれます。AIが作成したものに多少手を加える必要がありますが、一から自分で作成するよりは圧倒的に早く作成できます。
また、予測AIを活用した場合は、生産管理の需要予測を自動化できます。
過去の需要データからAIが出荷数を予測してくれるため、過剰在庫や欠品での機会損失を防ぐことが可能です。
AIツールは、文章作成や壁打ち、大量データの予測・分析などの業務自動化に適しています。一方で、AIの回答は過去のデータや経験から行うため、斬新なアイディアが必要とされるようなクリエイティブな業務には不向きと言えます。
チャットボットは、会話(Chat)とロボット(Bot)を組み合わせた言葉で、ユーザーの質問に対して自動で返答してくれるプログラムです。
ユーザーが選択した質問に対して予め決められた回答を返すものや、AI会話機能を搭載し、自由入力された質問に対して回答できるチャットボットもあります。
ECサイトでは、チャットボットを導入することで、商品検索や配送・返品手続きなどのよくある問い合わせ対応を自動化できます。これにより、ユーザーは必要な情報をすぐに得られるため、満足度の向上にも繋がります。
また、社内でもヘルプデスクとしてチャットボットを活用できます。社員からのITシステムや人事・総務関連の問い合わせを自動化することで、各部門の負担を軽減することが可能です。
チャットボットは、顧客対応や社内ヘルプデスク業務の自動化に適しています。一方で、複雑なものや専門的な知識が必要な回答にはあまり向いていません。
AI-OCR(Optical Character Recognition)は、画像やPDFデータから文字情報を抽出してテキストデータ化する技術です。
近年のAI-OCRは、高度な画像処理技術と機械学習を用いて、手書き文字や活字、傾いた画像などさまざまな文字を高い精度で読み取ります。
また、AI技術により様々なフォーマットの帳票(非定型帳票)も読み取りが可能になったAI-OCRもあります。AI-OCRの活用により、これまで手入力で行っていた紙のデータ化を自動化できます。
AI-OCRで発注業務の自動化が可能です。
手書き文字で書かれた紙の注文書をPDF化し、AI-OCRでテキストデータ化すれば、データ入力の時間を大幅に削減できます。
AI-OCRは、大量の紙文書や画像データを扱う業務の自動化に適しています。
さらに、RPAも活用すれば、AI-OCRでデータ化したCSVをダウンロードし、基幹システムへ登録する一連の作業も自動化できます。
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紙帳票のデータ化・入力作業を効率化させるAI-OCRについてと、RPAの連携事例をご紹介いたします。
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業務自動化を進めるには、段階的な手順が重要です。
いきなりツールを導入しても、思うように自動化が進まないことがあり、結果的にプロジェクトが頓挫することもあります。
業務自動化の効果を最大限に発揮するには、手順に沿って計画的に進めていきましょう。
ここでは、業務自動化の具体的な手順について解説いたします。
まずは業務を棚卸しして、自動化の対象となる業務をピックアップします。
業務を自動化するには、その業務がどのような流れで行われているのかまで明確にする必要があります。
以下の項目をExcelなどにリストアップすることをおすすめします。
・業務名
・業務内容
・処理手順
・操作対象システム
・発生する頻度
・所要時間
特に繰り返しが多い定型業務や、工数が大きい業務、ミスが多い業務を優先的に自動化することをおすすめします。
自動化する対象業務をリストアップしたら、自動化ツールの選定を行いましょう。
自動化の方法としては、RPAやマクロ、AIツールなど、さまざまです。
例えば、Excelでデータの加工や集計だけならマクロでも対応できますが、加工したデータをシステムに取り込むなど複数のシステムを横断する業務にはRPAが適しています。
選定の際は、各ツールの機能、コスト、導入のしやすさ、メンテナンスなどを総合的に判断し、業務内容に最も適したツールを選びましょう。
ツールを選定したら、業務の自動化を実施します。
実際の業務フローと整合性を確認しながら、自動化を進めます。
自動化が完了したら、業務担当者に自動化後の対応方法や管理方法を共有する必要があります。自動化のプロセスを事前にまとめておくと、共有がスムーズになります。
業務自動化プロジェクトの成功には、導入後に効果を測定することが重要です。
作業時間、コスト削減率、エラー発生率の低下などが効果測定の指標となります。
効果を可視化することで、自動化の成果を実感でき、社員のモチベーションも向上します。
具体的な数字やデータで成果を示すことで、社員が自動化のメリットを理解しやすくなり、社内での自動化推進がスムーズになります。これにより、さらに多くの業務を自動化することが可能になります。
自動化の効果測定で期待した成果が得られない場合は、問題点を洗い出し、自動化プロセスの見直しと改善を行いましょう。
また、自動化の効果を持続させるためには、定期的なメンテナンスが必要となることが多いです。特にRPAやマクロで業務を自動化した場合、業務手順が変更された際には自動化プロセスの修正も必要です。
業務自動化は、一度導入すれば終わりではありません。継続的な改善とメンテナンスを行い、自動化の効果を最大限に引き出すことが、プロジェクトを成功に導くポイントです。
業務自動化は、企業の生産性向上やコスト削減に大きく貢献しますが、導入には注意する点もあります。
判断を誤ると、自動化プロジェクトが思うように進まず、成果が得られないかもしれません。
適切な手順と注意点を押さえて進めることが業務自動化の成功の鍵となります。
ここでは、業務自動化を行う際の注意点について解説します。
自動化する業務の選定には注意が必要です。
すべての業務が自動化に適しているわけではありません。人の判断が必要な業務、業務フローが頻繁に変わる業務、機密情報を扱う重要な業務などは、自動化に向いていないことが多いです。
不向きな業務を自動化しても、十分な効果を実感しにくいため、慎重に検討しましょう。
さらに、自動化する方法やツールの選定も重要です。自動化したい業務に最適な方法を選ぶことで、自動化の効果を最大限に発揮できます。
業務自動化を成功させるためには、スモールスタートから始めるのがおすすめです。
自社にとって最適な業務自動化かどうかは、実際に導入してみないとわからない部分があります。
まずは比較的簡単で影響の少ない業務から自動化を試してみましょう。
一度に多くの業務を自動化すると、想定通りに動作しない、社員が急な変化に対応できないなど、さまざまな問題が発生するリスクがあります。
まずは小規模な範囲から始めることで、リスクを最小限に抑えながら、効果を検証しつつ進めることができます。
業務自動化は、生産性の向上やコスト削減といった効果をもたらします。
本コラムでは、業務自動化の主な方法と自動化の作業例をご紹介しました。
自動化の効果を最大限に引き出すには、自動化に適した業務と、その業務に適した方法で実施することが重要です。
まずは業務を棚卸しし、自動化対象業務の選定から進めることをおすすめします。
当社ヒューマンリソシアでは、自動化の成果を継続的に出し続けていただくために、RPAやAI-OCR、AIなどのデジタルツール販売だけでなく、教育や活用支援で持続可能な体制づくりを伴走支援いたします。
お客様が抱えるお悩みや課題に最適なサービスや製品をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。
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