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RPA導入「失敗」の落とし穴はどこ?原因と成功への秘訣を事例で解説

作成者: ヒューマンリソシア編集チーム|Sep 18, 2025 6:35:00 AM

                                                                                                                                                                                  2025.09.18-          


近年、業務の効率化や人手不足の解消を目的にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入する企業が増えています。
しかし、その一方で「思ったほど効果が出なかった」「現場に定着しなかった」といった失敗に直面するケースも少なくありません。

なぜRPA導入がうまくいかないのか、その背景には導入前の準備不足や運用体制の不備など、見落としがちな落とし穴が潜んでいます。
本記事では、RPA導入のよくある失敗事例をもとに、その根本原因と成功に導くための具体的なポイントをわかりやすく解説します。自社の状況と照らし合わせながら、参考にしてください。



目次



 

【まず理解】RPAが得意なこと・不得意なこと

RPAの導入を検討するうえで、「そもそも自社のどの業務が自動化に適しているのか分からない」と感じている方は少なくありません。失敗を避けて効果的にRPAを活用するためには、まずRPAに向いている業務・向いていない業務をしっかりと見極めることが大切です。RPAは万能な魔法のツールではなく、得意な作業と不得意な作業があります。

本章では、RPAの特性を理解する第一歩として、それぞれの業務の特徴をかみ砕いて解説します。

RPAが得意な業務の特徴

RPAが得意とするのは、ルールが決まっている定型的な業務です。特に、人がPC上で繰り返し行っている作業のうち、操作の手順や判断基準が毎回同じものは自動化に非常に適しています。

以下のような業務はRPA導入の効果が出やすい代表例です。
  • Excelと社内システム間でのデータ転記
  • 帳票の作成、出力、保存、メール送付
  • 受発注データの入力処理
  • 勤怠データの集計やチェック
これらの業務に共通しているのは、「ルールが明確」「例外が少ない」「手順が毎回変わらない」という点です。こうした条件を満たす業務であれば、RPAが人と同じ操作を安定的に繰り返し実行できるため、ミスの削減や作業時間の短縮につながります。


RPAが苦手・不向きな業務の特徴

RPAは業務を効率化する強力なツールですが、「なんでも自動化できる魔法のツールではない」という認識が重要です。向いていない業務に適用してしまうと、逆に手間が増えたり、想定外のエラーが発生したりする原因になります。特に以下のような業務はRPAには不向きです。
  • 人の判断・分析が必要な業務(例:メールの内容を読み取り、対応を判断)
  • 複雑すぎる業務(ルールに分岐が多く、頻繁に変更されるなど柔軟性が求められる)
  • スキャン画像や写真など、文字情報ではないデータの読み取りが必要な業務

これらの業務には、「例外的な処理が多い」「ルールが曖昧」「状況に応じた柔軟な対応が求められる」といった特徴があり、RPAだけで完結させるのは困難です。RPA導入を成功させるには、こうした業務との相性をきちんと見極め、得意な領域で活用することが重要です。

 

 

【事例で学ぶ】RPA導入でよくある失敗パターン

RPAは、業務効率化や人手不足の解消に役立つツールとして注目されていますが、導入すればすぐに成果が出るとは限りません。「自分の会社にもありそう…」と感じるような、導入後に直面しがちな課題も多いのが実情です。

こうした失敗の多くは、RPAの特性や導入プロセスに対する理解不足から生じています。
本章では、RPA導入でありがちな失敗パターンを具体的な事例とともにご紹介し、その背景を解説します。

期待した効果が出ない・費用対効果が見合わない

RPA導入でよくある失敗のひとつが、「期待したほどの効果が出ない」「費用対効果が見合わない」といったケースです。
ある企業ではRPAを導入して業務時間を月10時間削減できたものの、ロボットの開発・保守に月数十万円の外注コストが発生し、結果的に赤字運用となってしまいました。

また、自動化した業務がもともと非効率ではなかったため、RPA化による時間短縮効果がごくわずかで、投資回収の目処が立たない、というケースもあります。

こうした失敗の背景には、「どの業務をRPA化すべきか」の見極め不足があるでしょう。自動化すべき対象業務の選定を誤ると、コストばかりがかさみ、ROI(投資対効果)が見合わなくなってしまうことがあります。

【例】
人件費:月10時間×(時給3000円)=360,000円
ライセンス費用:RPA年間ライセンス料=1,000,000円
→ 人件費削減では回収できず赤字化

現場に浸透せず活用されない

RPA導入が失敗に終わる要因のひとつに、IT部門が中心となってRPAを進めた結果、現場の担当者が「知らないうちに導入されていた」と感じてしまうケースがあります。これでは、せっかくRPAを作っても結局使われず、今まで通り人の手で作業を続けてしまう、という状況に陥りがちです。
また、一部の担当者しか使い方を教わっておらず、その人が不在だと誰もロボットを動かせないなど、活用が属人化してしまうことも少なくありません。
こうした失敗は、RPA推進側と現場との温度差から生まれるものです。現場が抱える業務の課題や業務フロー、ニーズを十分に理解せずにRPAの導入を進めても、実際のニーズとズレが生じ、結果的に活用されないロボットが生まれるだけになってしまいます。RPAの効果を最大化するには、導入前から現場を巻き込み、運用のしやすさや業務フローへの適合性を意識した設計・サポートが欠かせません。

RPAのエラーが頻発し安定稼働しない・トラブル発生で業務が滞る

RPA導入後に「エラーが頻発して業務が止まる」「安定して稼働しない」といったトラブルに悩まされるケースも多く見られます。特に今までで多いのが、画面上の見た目や位置を手がかりに操作を記録するタイプのRPAが、UI(画面デザイン)の変更に対応できずに停止してしまうエラーです。

社内システムやWebサイトの画面デザイン、ボタンの位置・名称が更新されただけで、RPAが操作対象を認識できずに停止してしまうといった事例があります。

さらに、エラーが発生し、RPAが停止した際に現場の担当者が対応できず、復旧までに時間がかかってしまうことも問題です。復旧手順が属人化していたり、エラーの原因特定に専門知識が必要だったりすると、復旧作業に時間をとられ、結局手作業で対応する羽目になり、「RPAがない方が早かった」ということにもなりかねません。

導入後の運用体制・保守を軽視すると、RPAがかえって業務のボトルネックになってしまう恐れがあります。

管理が行き届かず「野良ロボット」化・保守困難 

RPAの導入が進むと、誰が作ったか、何のために動いているかわからない「野良ロボット」と呼ばれる状態になるリスクがあります。これは、作成されたロボットの管理台帳が整備されておらず、バージョンや担当業務が不明なまま放置されている状態です。

結果として、業務内容が変わっても修正されずにエラーを出し続けたり、知らないうちに重要な処理を止めてしまったりする問題が発生します。さらに、類似したロボットが重複して作られ無駄なコストが膨らむことも少なくありません。

開発者が退職…管理方法がわからない(RPA開発の属人化)

「野良ロボット」問題と密接に関わるのが、開発の属人化です。特定の担当者しかロボットの仕様を理解していない「ブラックボックス状態」は非常に大きなリスクです。その担当者が退職や異動で離れると、誰もロボットの詳細な設計や動作を理解していないため、保守や修正ができなくなってしまいます。

これにより、障害発生時の復旧が遅延し、業務に支障をきたすケースが多く見られます。また、属人化が進むと業務知識が共有されず、新たな担当者の負担が増大し、結果として運用コストが膨らむ原因にもなります。

安定したRPA運用のためには、ドキュメント化や複数人での管理体制を整備し、属人化を防ぐ仕組みづくりが不可欠です。

開発・運用に想定以上の手間とスキルが必要

RPA導入時、より業務削減効果が大きいと見込まれる処理を対象に選ぶことは自然な流れですが、実際にはその開発や運用に予想以上の時間とスキルが必要になるケースも多く見られます。

ある企業ではバックオフィスの業務効率化を目指し、処理量が多く効果が大きいと思われた経費精算業務の自動化を試みました。

しかし、業務には多くの例外処理や分岐があり、開発には詳細な業務理解と高度な設計力が求められた結果、当初想定していた開発期間を大幅に超えてしまいました。

さらに、稼働後もエラー対応やシステム変更への対応が頻繁に発生し、保守運用に継続的な人的リソースが必要となったことで、結果的に削減効果よりも手間のほうが上回ってしまったというケースもあります。

自動化したい業務や規模によっては、高度な業務理解や設計力、メンテナンススキルが求められるため、想定外の手間とコストが発生してしまう場合もあります。

そもそもRPAの機能を使いこなせていない

多機能なRPAツールを導入したものの、基本的な操作しか使えず、エラー処理や複雑なシナリオを作成できない、というのもよくある失敗例です。RPAは多機能な反面、全ての機能を使用しツールを十分に使いこなすには相応のスキルが必要であり、習得が容易ではないという現実もあります。

ある企業では、バックオフィス業務の自動化を目的に高機能なRPAツールを導入しました。しかし、実際には開発担当者が基本的な記録・再生機能しか理解しておらず、エラー処理や複雑なシナリオの構築ができない状態に。ロボットは頻繁に停止し、結局は従業員が手作業に戻るという本末転倒な結果となりました。

このように、RPAを活用するには単なる操作スキルだけでなく、業務設計力やトラブル対応力が欠かせません。ツールの機能を引き出せなければ、せっかくの自動化投資も成果に結びつかない恐れがあるため、導入前から教育体制や外部支援の検討も重要です。

 

 

なぜ失敗する?その理由は?RPA導入がうまくいかない根本原因

RPA導入における失敗は、「ロボットが動かない」「効果が出ない」といった表面的な結果だけに注目されがちです。しかし、こうした問題は単なる技術的なミスや偶発的なトラブルではなく、もっと根深い構造的な原因によって引き起こされていることが少なくありません。

なぜRPAの導入は失敗してしまうのか。本章では、RPA導入がうまくいかない根本原因を掘り下げ解説していくので、自社に当てはまるものがないか確認してみましょう。

導入目的・目標が曖昧

RPA導入がうまくいかない根本原因の一つが、「導入目的・目標が曖昧なままプロジェクトが進められてしまうこと」です。「他社も導入しているから」「上層部の指示でとりあえず入れてみた」といった動機でスタートし、具体的なゴールやKPIが設定されないまま開発が進行してしまうケースは少なくありません。

ある企業では、業務効率化を掲げてRPAを導入したものの、「どの業務をどれだけ効率化するのか」「効果をどう測定するのか」といった基準が不明確でした。結果として、現場では優先順位の低い業務が自動化され、時間とコストをかけたわりに効果が実感できず、最終的にはRPAそのものが形骸化してしまいました。

このように、導入のビジョンや目的が曖昧だと、業務選定や運用方針にもブレが生じ、社内の理解や協力も得られにくくなります。RPAを成功させるためには、「何のために導入するのか」「何を達成したいのか」という目標を明確にし、それを全社で共有することが重要となるでしょう。

自動化する業務の選定ミス

RPAは定型的でルールが明確な作業に強みを持つツールですが、導入に失敗する多くのケースでは、その特性を踏まえずに「自動化する業務」を誤って選んでしまうという問題があります。「作業時間が長い」「人手がかかっている」という理由だけで、内容の複雑さを十分に精査せずに自動化対象にしてしまうと、トラブルの原因になるので注意が必要です。

実際には、人の判断が必要だったり、イレギュラーな対応が多発する業務にRPAを適用してしまったりすると、ロボットが処理できないパターンにたびたび直面し、頻繁なエラーや停止が発生します。その結果、想定していた効率化が実現できず、むしろ現場の手間が増えてしまうことさえあるでしょう。

RPAに適した業務は、「手順が毎回同じで、例外が少なく、ルールが明文化されている作業」です。こうした基準を無視して業務を選定してしまうと、開発工数は膨らみ、運用保守も煩雑になり、最終的にコストや労力に見合わないプロジェクトになってしまいます。RPA導入の効果を最大化するには、どの業務が本当に自動化に向いているのかを正しく見極める力が不可欠です。

現場の理解・協力が得られていない

RPAの導入を推進する側と、実際にそれを使う現場との間に「溝」が生まれてしまうことも、失敗の大きな原因です。導入を推進する部門が「業務効率化」を目的にロボットを開発しても、現場にその意図や使い方がきちんと伝わっていなければ、RPAは定着せず、むしろ現場の負担を増やしてしまう結果になるでしょう。

操作方法が不十分なままロボットだけが導入され、「エラーが起きても対処できない」「結局自分たちでやり直す羽目になる」といった声が現場からあがるケースがあります。ロボットが現場業務の流れにフィットしていなかったり、手順が複雑だったりすると、逆に作業時間が延びてしまい、導入の効果が感じられないどころか不満の原因になることもあるでしょう。

このような現場との溝は、導入前から現場を巻き込まないことに起因します。現場が抱える課題や業務フローを理解しないまま開発を進めると、ロボットが使われない状態に陥るのは時間の問題です。RPA導入を成功させるには、技術的な視点だけでなく、現場との対話を重ねながら、現実的で使いやすい運用設計を行うことが求められます。

運用・保守体制が整備されていない

「運用・保守体制の整備不足」も、RPA導入が失敗に終わる大きな要因のひとつです。
導入時の開発に注力するあまり、ロボット稼働後の管理体制が曖昧なまま放置されるケースは少なくありません。
その結果、運用が始まった途端にトラブルが発生し、「誰が対応すべきか分からない」「復旧までに時間がかかる」といった混乱が生じるのです。

ロボットがエラーで停止した際、「誰が、どうやって直すのか」というルールや担当者が決まっていないと、業務はすぐに滞ってしまいます。トラブル時の対応フローや、開発者が異動・退職した後の引継ぎ方法など、運用・保守体制の欠如は、RPAの安定運用を著しく妨げ、せっかくの投資が無駄になってしまう原因となります。

RPAは導入して終わりではなく、継続的な運用と改善が前提の仕組みです。そのためには、ロボットごとの管理台帳の整備、トラブル時の対応マニュアルの作成、複数人での保守体制の構築など、導入後の支援体制をあらかじめ用意しておくことが求められます。
運用フェーズまでを視野に入れた計画こそが、RPA導入成功のきっかけとなるでしょう。

効果測定と改善が行われていない

RPA導入が期待通りの成果につながらない理由として、「効果測定と改善が行われていない」という点も見逃せません。多くの企業では、RPAを導入した段階でひとまず業務効率化が達成されたと考え、そこでプロジェクトが終了してしまう傾向があります。しかし、導入はあくまでスタート地点であり、その後の効果検証と継続的な改善こそが、成果を生み出す秘訣です。

ロボットが一応動いてはいるものの、想定よりも処理速度が遅かったり、業務の変化に追従できていなかったりする場合、定期的な効果測定がなければ問題に気づくことができません。また、「何件の処理を自動化したのか」「どれだけの工数削減につながったのか」といった数値を可視化していないと、改善の余地や次の展開も見えなくなります。

RPAは「導入して終わり」ではなく、PDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルを回すことが前提の取り組みです。稼働後に定期的なモニタリングと改善を行わなければ、時間とともにロボットが陳腐化し、効果が薄れていくリスクもあります。導入後こそ丁寧な評価と最適化を続けることで、RPAは組織にとって本当に価値あるツールへと変わってくるでしょう。

RPAツール・ベンダーの選定を失敗

「自社の目的やスキルレベルに合わないツールや、サポート体制の弱いベンダーを選んでしまう」ことも、失敗の根本原因になるケースがあります。
RPAはツールによって機能や操作性、対応できる業務範囲が大きく異なります。
選定時に十分な比較や検討を行わず、話題性や価格だけで決めてしまうと、導入後に「思っていた使い方ができない」「自社の業務に合わない」といった問題が表面化してくるでしょう。

たとえば、IT部門の支援が少ない現場で使うにもかかわらず、プログラミングスキルが求められる上級者向けツールを導入してしまい、社内に浸透せず、誰も使えなくなるケースもあります。また、サポート体制が脆弱なベンダーを選んだ結果、トラブル発生時に迅速な対応が受けられず、問題解決が遅れ、現場のRPAに対する信頼が失われることにもつながります。

RPAは長期的に運用する仕組みであるため、導入コストだけでなく、その後の運用性・保守性まで視野に入れた選定が重要になってくるでしょう。

 

 

失敗しないために!RPA導入を成功させるための7つのポイント

ここまでRPAの失敗パターンとその原因を見てきましたが、RPA導入で失敗しないためには、どうすれば良いのでしょうか?
RPAは導入の仕方次第で、業務効率や生産性を大きく向上させる強力なツールとなります。
本章では、RPA導入を成功に導くために押さえておきたい7つのポイントを解説していくので、参考にしてください。

①導入目的と目標(KPI)を明確にする

RPA導入を成功させる第一歩は、「なぜ導入するのか」「導入して何を達成したいのか」という目的と目標を明確にすることです。

これを曖昧なまま進めてしまうと、どの業務を自動化すべきか判断できず、導入後に「結局何が改善されたのか分からない」といった事態につながるケースが多いです。

事例としては、下記の通りになります。

目的:「月末の請求書発行業務の負荷を軽減し、残業時間をゼロにする」
KPI例:「請求書作成にかかる時間を月間100時間削減する」「手作業による入力ミスを99%削減する」

数値で測定可能な指標を設定すると効果が見えやすくなります。導入前後での比較ができるよう、現状の業務量や工数の可視化もセットで行うことが重要です。

RPAは自動化することが目的ではなく、業務をどう改善するかが本質になります。明確なゴールがあれば、関係者の認識も揃い、プロジェクトの方向性がぶれずに進められるようになるでしょう。

②自動化対象業務を慎重に分析・選定する|RPAの特性を理解しよう

RPAはすべての業務を自動化できる「万能ツール」ではありません。得意とするのは、作業手順が毎回同じで、繰り返しが多く、ルールが明確な業務です。たとえば、データの転記、帳票の出力、定期的な照合作業などが該当します。しかし、判断が必要だったり例外が頻繁に発生したりする業務は、RPAには不向きです。

「よく時間がかかっているから」「属人化しているから」といった理由だけで安易に対象を決めるのではなく、対象業務の特性(定型性・反復性・ルールの有無)を客観的に分析し、RPAに向いているかどうかを判断する基準を持つことが必要です。

ヒアリングシートなどを用いて現場に確認

現場の業務実態を正確に把握するためには、担当者へのヒアリングや業務棚卸しが欠かせません。業務の流れや発生頻度、例外対応の有無などを洗い出すことで、RPA化に適した業務とそうでない業務の仕分けができます。また、ヒアリングシートのようなツールを活用すると、抜け漏れなく情報を収集できます。さらに、業務の可視化を進めること自体が、改善の糸口や無駄の発見につながるという副次的なメリットもあるでしょう。


ヒューマンリソシアでは、RPA化すべき対象業務の選定ポイントや業務可視化のメリットについてまとめた資料を提供しています。
すぐに使える「業務棚卸し・シナリオ作成準備シート」も付属していますので、ぜひご活用ください。

RPA化対象業務選定のポイントと業務可視化のメリット ※業務棚卸し・シナリオ作成準備シート付き
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③スモールスタートでリスクを管理する

いきなり全社展開を目指すのではなく、まずは特定の部門や業務に絞って「スモールスタート」で始めることが成功へのカギです。
効果を急ぐあまり、最初から全社的に自動化を進めようとすると、業務の複雑さや部門ごとのルールの違い、現場との調整不足などにより、想定以上の手間や混乱を招くリスクが高まります。

そこで有効なのが、スモールスタート(小規模導入)による段階的な展開です。まずは一部の業務や小さな部門でRPAを試験的に導入し、ツールの操作性や自動化対象業務の選定基準、現場との連携体制、運用時の課題などを確認します。小さく始めれば、技術的・組織的な課題を早期に発見・修正でき、将来的な拡大に向けたノウハウを蓄積させることが可能です。

また、パイロット導入の結果を社内に共有することで、他部署への説得材料や導入効果の可視化にもつながり、全社展開のための合意形成を得やすくなるメリットもあります。RPAは一度に完璧な成果を求めるのではなく、小さな成功を積み重ねながら体制と知見を強化していくアプローチが、結果として安定した運用につながるでしょう。

④現場を巻き込み、理解と協力を得る

RPA導入を成功させるには、現場の協力が不可欠です。しかし、「RPAで自動化するから使ってください」と一方的に説明するだけでは、ツールが現場に根付かず、むしろ反発や混乱を招いてしまう可能性があるでしょう。

大切なのは、現場の業務を熟知している担当者を当事者として巻き込み、導入プロセスに主体的に関与してもらうことです。RPAを「上からの指示」ではなく、「自分たちの業務をよくする手段」として認識してもらえるような工夫が必要になります。

プロジェクトメンバーを決めておく

現場部門からもメンバーを選出し、プロジェクト初期から議論に参加してもらうことで、現場の実態に合った業務選定やシナリオ設計が可能になります。担当者自身が導入に関わることで、運用への理解と定着が促されるでしょう。

社内勉強会や研修の開催

RPAに対する抵抗感をなくすには、ツールの使い方や導入事例を紹介する勉強会やハンズオン形式の研修などの開催が有効です。
RPAの操作を実際に体験できる場を設けることで、現場担当者の関心と習熟度を高め、活用意欲の向上につながります。

社内定例会で情報共有

プロジェクトの進捗や導入効果、課題などを定期的に共有することで、関係部門との認識のズレを防ぎます。他部署の取り組みを共有することで「自分たちも取り入れたい」という前向きな動きが生まれ、社内全体への波及効果も期待できるでしょう。

このように、現場目線を取り入れた工夫と継続的な対話が、RPAを社内に根付かせるための重要なステップとなります。

⑤自社に合ったツールを選び、運用・保守体制を構築する

RPA導入を成功させるには、ツールの性能や価格だけでなく、「自社の業務体制やスキルレベルに合っているか」を基準に選定することが重要です。どれだけ高機能なRPAツールであっても、運用を担う人材が使いこなせなければ、機能の多くは宝の持ち腐れになってしまいます。

現場主導で運用するケースでは、誰がロボットを作成・管理・保守するのかを明確にし、属人化を防ぐ仕組みづくりが欠かせません。

ツール選定では、操作性やサポート体制、トラブル時の対応スピードなども評価軸として検討しましょう。また、導入後の運用体制についても、「エラーが起きたときに誰が対応するか」「業務変更があったときに誰がシナリオを修正するか」といった運用フローの明確化と担当者の割り振りが必要です。

導入段階だけに注力してしまうと、いざ稼働を始めたあとに保守が回らなくなったり、管理されない野良ロボットが増えてしまったりするリスクがあります。長期的に安定運用するためには、技術的・組織的な両面から、ツールの選定と運用体制の整備をセットで考える視点が求められるでしょう。

⑥効果測定を行い、継続的に改善する

RPAは「導入して終わり」ではなく、導入後の振り返りと継続的な改善こそが成果を左右する重要なプロセスです。ロボットが動いているからと安心せず、その運用が本当に業務効率化やコスト削減につながっているかを、定期的に見直すことが不可欠になります。

次のような指標を使って効果を数値で測定することで、課題や改善点が見えてくるでしょう。
  • 自動化により削減された作業時間(月間○時間削減)
  • 作業ミスの件数(従来○件→自動化後○件に減少)
  • 対象業務の処理件数(1日○件 → 自動化後○件)
  • RPA稼働率やエラー発生率の推移
これらのデータをもとに、必要であればシナリオの見直しや、より効果の大きい業務への展開を検討するなど、改善サイクル(PDCA)を回すことが、RPAの定着と活用範囲の拡大につながります。

また、現場からのフィードバックも忘れてはいけません。実際にツールを使っている担当者の声を聞きながら、業務フローやロボットの動作を柔軟に調整することで、より現場にフィットした運用が実現できるでしょう。


⑦サポート体制があるベンダーを選ぶ

RPA導入を成功させるうえで見落とされがちですが、導入後のサポート体制が充実しているベンダーを選ぶことは非常に重要です。RPAは導入した瞬間から本格的な運用フェーズに入るため、設定ミスやエラー、業務変更への対応など、日常的に発生する課題にどう向き合うかが成否を左右します。

自社内にRPAの知識や運用スキルがまだ蓄積されていない初期段階では、「困ったときに相談できる相手がいるか」「迅速に対応してもらえるか」という安心感が、継続運用の大きな支えとなるでしょう。

サポート体制の確認ポイントとしては、「導入後の定期的なフォローがあるか」「問い合わせ対応のレスポンスは早いか」「トレーニングやドキュメント提供が充実しているか」などを事前にチェックしましょう。RPAは長期運用を前提とした仕組みです。ベンダーの「伴走支援」があることで、導入後の安定稼働と改善のスピードが大きく変わります。

ヒューマンリソシアでは、RPAツール「WinActor」において、お客様に寄り添う「伴走支援」を重視しています。
NTTデータと共同開発した教育カリキュラムを軸に、導入前から導入後まで一貫した手厚い教育・技術支援を提供します。

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成功の秘訣とは?RPAの導入成功企業の事例をご紹介

RPAは「導入すれば自動化できる」という簡単なものではありません。実際には、目的の明確化や業務選定、現場との連携、運用体制の整備など、いくつものハードルを乗り越えて初めて効果を発揮します。
では、RPA導入に成功している企業は、どのような工夫や体制でそれを実現しているのでしょうか?

本章では、実際にRPAを導入し成果を上げている企業の事例をご紹介します。どのような課題があり、どのように乗り越え、どんな成果を出しているのかを具体的に知ることで、自社の導入計画や運用改善のヒントを得ることができるでしょう。

ヒューマンリソシアから導入いただいた事例を3つご紹介します。

カンロ株式会社様:課題の明確化と人材育成を意識した取り組み

カンロ株式会社様では、スマートファクトリー推進の一環として、まず工場の業務部門でRPAツールのWinActorを導入しました。
効果検証のためシナリオ作成は外部に委託し、翌年には本社でもトライアルを実施しています。

RPA導入前に部門間の連携不足や業務の属人化、転記・二重入力といった非効率な作業が多く、さらに残業や改善意欲の停滞といった意識の課題もありました。

導入時はRPAツールのWinActorの研修を受講しながら、現場ヒアリングと業務選定、プロセスの可視化・標準化を進め、業務課題の抽出と解決を行いました。そのうえで自動化に着手しています。

研修は、初級研修を受講していただき、その後2ヶ月使えるWinActorライセンスを活用して、慣れてもらう作業から開始しました。次の段階として、実践トレーニング研修を受講してもらい、予習・復習にはいつでも学べるeラーニングを用意しています。

導入後、半年くらい経過した頃には、トライアルをしている方が作成したシナリオを発表する成果発表会、また、月1度のミーティングや技術相談会などを実施するなど、開発者の育成を重視した取り組みを実施されています。

結果、徐々に社内で「活用してみたい」という声が出てくるようになりRPAの活用が広がっていきました。実際の業務の自動化では、経理部内で12業務を自動化し、年間232時間の業務削減にも繋がっています。
さらに、拠点ごとに異なっていた処理方法もRPAにより統一され、業務標準化が実現しています。

このように、大きな成果を出すことを目的にする前に、事前に人材育成の強化が重要と判断し、開発者の育成に取り組んだことで、RPAの導入を成功へと導いています。

導入事例の詳細はこちら


八千代エンジニヤリング株式会社様:全社展開を見据えた現場主導の育成

八千代エンジニヤリング株式会社様では、限られた人員で入札・契約関連業務を担う事務担当者の負担が大きく、特に年度末には残業が常態化していました。働き方改革の一環として残業削減が急務となる中、同社はRPAに着目し、まず営業企画課で営業情報収集業務の自動化に着手しました。

まず営業企画課で、営業情報収集のシナリオ作成を進めていきました。しかし、全社展開に向けて「実務者の作業時間確保」と「気軽に質問できる環境づくり」が課題となりました。そこで、各実務者に作成したいシナリオを挙げてもらい、内容ごとにグループ化することに。少人数で月1回のワーキングを開催し、集中して作業できる時間と相談できる環境を整備しました。

また、既存シナリオのパーツをテンプレート化して活用し、さらに新たに作成したシナリオもテンプレートとして社内共有スペースへの蓄積に成功しています。これにより、再利用しやすい仕組みの構築が完成しました。

結果として、年間2,000分の業務削減を実現しただけでなく、作業ミスの排除や精神的負担の軽減といった効果が得られています。

今後は、総務部門などの他の部門でもRPAの導入を検討されています。

導入事例の詳細はこちら



株式会社藤田製作所様:業務の見直しと明確な運用体制づくり

株式会社藤田製作所様では、RPAツールであるWinActorを導入するにあたり、まず業務手順の標準化とルール整備に重点を置きました。手順が明確でなければ、RPAの運用トラブルが多発するとの懸念から、事務作業全体を見直すプロセスからスタートしています。

業務を洗い出す中で、担当者の不在による業務停止や、教育・引継ぎによる認識のバラつき、個人PCへのデータ保存による情報共有の不備といった課題が浮き彫りになりました。これらに対し、数か月をかけて業務手順の文書化やサーバー運用ルールの整備を実施しています。

標準化が整った部署から月6件のロボット開発を目標にRPA活用を本格化させました。製品受注から製造指示に至る一連の業務を自動化した結果、年間9,600分の作業時間を削減し、ミスや漏れも大幅に減少。

1年間で54業務のロボット化に成功し、累計で年間1,850時間の工数削減を達成しました。今後はOCR(画像から文字を読み取る技術)やAIとの連携、ロボット管理の効率化にも取り組み、さらに高度な自動化を目指しています。こうした段階的かつ計画的な体制づくりこそが、成功の大きな要因といえるでしょう。

導入事例の詳細はこちら

 

 

まとめ

本記事では、以下のことを解説しました。

・RPA導入におけるよくある失敗パターン
・失敗してしまう根本原因
・成功への道を切り拓くための7つのポイント

RPA導入は、業務効率化や働き方改革の強力な手段である一方で、「思ったほど効果が出なかった」「ロボットが使われない」「エラーばかりで逆に手間が増えた」といった失敗事例も少なくありません。その多くは、RPAの特性を正しく理解せずに導入を急いだ結果や、現場との連携不足、運用体制の不備に起因するものが多くあります。

成功している企業は、共通して「目的の明確化」「業務の可視化」「社内での理解促進」「体制整備」といった事前準備を丁寧に行い、現場と一体となって推進体制を築くことで、成果を積み上げています。

「自社でRPA導入を成功させられるか不安…」「何から手をつければ良いかわからない」もしこのようにお考えでしたら、ぜひ一度ヒューマンリソシアまでご相談ください。
導入から運用まで寄り添った形で支援いたします。成功に必要な準備や進め方を一緒に考えていきましょう。

 



【よくあるご質問】

RPA導入の根本的な失敗原因

Q. RPA導入が失敗してしまう根本的な原因は何ですか?  

A: 「何のために導入するのか」という目的や目標が曖昧なままプロジェクトが進んでしまうことが原因の一つです。  
A: RPAの特性を理解せず、人の判断が必要な業務など、自動化に不向きな業務を選んでしまうことも失敗につながります。  
A: 開発側と利用する現場との間で連携が取れず、現場の実態に合わないロボットが作られてしまうことも大きな原因です。  
A: ロボット稼働後のエラー対応や修正といった、運用・保守の体制が整備されていないことも失敗を招く要因となります。

よくあるRPA導入の失敗パターン

Q. RPA導入でよくある失敗パターンには、どのようなものがありますか?  

A: 業務時間を削減できても、開発や保守のコストが上回り、費用対効果が見合わなくなるケースです。  
A: 現場の担当者が使い方を十分に理解しておらず、せっかく導入したRPAが全く活用されないケースです。  
A: Webサイトの更新など些細な変更でエラーが頻発し、安定して稼働しない、あるいはトラブル対応に追われるケースです。  
A: 管理されずに誰が作ったかわからない「野良ロボット」が増えたり、開発担当者の退職で誰も修正できなくなったりするケースです。

RPA導入を成功させるためのポイント

Q. RPA導入を成功させるためには、どのようなポイントを押さえるべきですか?  

A: 「残業時間をゼロにする」など、導入の目的と具体的な数値目標(KPI)を明確にすることが重要です。   
A: 「時間がかかっているから」という理由だけで選ばず、RPAが得意なルールが明確で繰り返しが多い定型業務を慎重に選定することが必要です。
A: まずは特定の部門や業務に絞って小さく始める「スモールスタート」で、課題を修正しながらノウハウを蓄積することが成功のカギです。  
A: 開発の初期段階から現場担当者を巻き込み、RPAを「自分たちの業務をよくする手段」として協力体制を築くことが不可欠です。  
A: 導入して終わりではなく、削減できた作業時間などを定期的に測定し、改善を続けていくことが成果につながります。
A: 自社に知見がない場合、エラー発生時などに困らないよう、導入後のサポート体制が充実したベンダーを選ぶこともポイントです。

 

 

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