近道は、社内でRPA導入賛成派を探すこと
――いざ、導入に向けて工夫されたことをお聞かせください。
三上氏 自分一人がWinActorの導入を希望しても、他にも必要性を感じて、使いたいと思う人がいないと 導入にはこぎつけないと思ったので、まずはWinActorを使用したら効果がでそうな業務が他にもないか、 いろいろな部署にあたってみることからスタートしました。並行して、予算を通してくれる人、デジタル ツール導入について決裁権限がある人を探すことにしたのですが、ただ「単に権限がある人」ではなく、 社内をより良く改善していこうと声をあげてくれる人、つまり、味方になってくれる人を探したことが、 一歩大きく踏み出すために工夫した点にあたるのかもしれません。その甲斐あって、社内に広く声を掛け、 自動化できそうな業務がないかヒアリングを続けていく中で、「業務効率化」を強く推奨し、RPA導入の 必要性を感じていた方と意気投合し、その方が偶然にも決裁権限も持っていたので、私が所属する部署が 窓口となって導入することが決まりました。
活用スタート後、もっと「使いたい」を増やすために。
――WinActorを活用してどのような結果や変化がありましたか?
三上氏 ヒアリングの結果、効率化の対象となる業務はいくつか見えてきましたが、設計や調査といった
実務を担当している社員は皆、多忙で、通常の業務をこなしながら新たにWinActorの使用方法を覚える
余裕はありませんでした。また、そのような実務は、フォーマットがあるわけでなく、一業務ごとにオリ
ジナルであることから、RPAには適さない部分も見えてきました。
そこで、まずはRPAに適していて、効果も出やすい業務についてRPAを適用しようと、WinActorのシナリオ
作成は「私が・・・」という考えも頭をよぎりましたが、私も研究分野の本業があること、私以外の誰も触
れられなくなるということから、それもまた現実的とはいえず、何かいい方法はないかと思っていたところ
に、ヒューマンリソシアの技術サポートサービスを知ることとなりました。セキュリティ上安全なリモート
ツールを使用して、遠隔でプロの技術者にシナリオ作成を依頼できるというサービスで、初心者が長時間か
けてシナリオを作成するよりも、メリットがあると感じ、このサービスを利用してシナリオ作りをお任せし
ようという判断にいたりました。というのも、シナリオ作りのポイントを知り尽くしたプロが作ったシナリ
オが社内に残れば、あとあとシナリオを内製化しようとなったときにも、それをお手本とすることができる
からです。自分たちの力だけでRPA化を進めるよりも、外部サービスを活用してスタートする方が、私たち
には合っていたと思います。
ライセンスを導入してまもなく、シナリオが出来上がったので、自動化の様子をいくつか動画にして社内に
展開しました。すると、いつも手作業で行っていた業務がロボットで処理されているのを見た若手社員から、
「もっと使いたい」、「次はこんなことを自動化してみたい」と反響が続々と送られるようになりました。
利用希望者を増やし、自動化のアイディアを募るには、導入開始後、比較的短期間で成果を出して、社内の
実際の事例を展開できたので、反応は大きかったです。よりイメージしやすい事例を社内で展開できるかど
うかが、他部署展開において重要だと実感しています。
――具体的な、代表的な業務の自動化の事例を教えて下さい!
三上氏 冒頭にお話した、RPAの本格導入のきっかけとなった工事現場近くに生息するオオタカの観察動 画をダウンロードする業務の自動化です。動画は、5分間隔で区切られて保存されるので、1日に288本の 動画が、カメラと連動したクラウド上にアップロードされていきます。それを1日単位ごとに、288回ダウ ンロードして自社のフォルダに格納するのですが、人が作業した場合、一日約1時間ほどの作業となります。 オオタカが巣を作って雛が巣立つまでの年間150日間、継続してこれを実施しなくてはいけませんが、それ をRPAで自動化すると、人が作業するのは、WinActorを起動してシナリオを実行するだけになるので、1日 に2分もかかりません。
自動化によるメリットは、年間で8,700分(1日58分×150日)の時間削減だけにとどまらず、単調すぎる 作業だからこそ発生するケアレスミスの撲滅や、取り忘れや取り直しがなくなり、社員の精神的な負担の 軽減にも繋がっています。
他方、国交省等からの公示案件をExcel化する際に、csvで提供されているデータ以外に、Web上に表示され
ている項目を追加する作業を、これまでは若手社員が手作業でコピー&ペーストしていました。これについ
ても、ヒューマンリソシアの技術者にシナリオ作成していただきました。ある支社では、若手社員が四半期
ごとに14時間(7時間×2日)作業していましたが、それがRPAではワンクリックで完成することができるよ
うになりました。
ちなみに、四半期ごとの作業であること、当社には7支社あることから、支社によって数量は異なりますが、
全社で年間500時間以上の削減になりました(支社によっては面倒なのでやっていないところもありました)。
魔法なんてない!―アジャイル開発の考え方で始めよう
――WinActor活用のコツを教えていただけますか。
三上氏 まず、RPAを使うための考え方として、最近、AIなどでよく言われているアジャイル開発のよう に、始めから様々なケースにも対応できる万能なロボットを作ろうとするのではなく、みんなが見て成果 が分かるようなものを、小さく作り始めるところからスタートしていくことが大事ではないでしょうか。 意気込みから、ついつい業務全体を自動化しようと思いがちですが、「1から10までをボタン一つ押して 終わり」という魔法のような幻想は、RPAにおいては禁物です。今の時点で自動化できるところから一つ 一つ、RPAに置き換えていくという形で良いのではと思っています。というのも、業務全体の自動化をす
るには時間も要しますし、うまくいかない部分も多数出てきます。さらに、どこかのフォーマットや仕組
みが変わるとシナリオ全体を修正する必要がありますし、修正している間に、全体の作業が滞ってしまう
からです。
また誰かが窓口となり、推進役として機能することも大切だと思っています。ライセンスをしっかり管理 することで、フル機能版と実行版を賢く使いわけることができますし、外部リソースを活用する際には、 業務担当者と外部エンジニアの間に入って、情報の整理をすることで、開発がスムーズに進みます。業務 担当者には現状で自動化できることと、できないことを整理し、外部エンジニアには業務内容が理解でき るよう、サポートを心掛けていますが、その結果がこれまでの成果に繋がっていると感じています。
――WinActorの活用を今後どのようにお考えですか?
三上氏 自動化したい業務を担当している社員に、直接、個別の聞き取り調査を実施して、作業手順を動 画で記録してもらい、それを外部技術者に送ってシナリオ化を依頼とする、という流れで、今後も社内の 業務自動化を進めていきたいと思っています。ただ、「自動化できる作業はないですか」と尋ねても出て
きませんので、『一番時間を要している作業で、個人の判断を必要としない単純作業はないですか』とい う調査をしていくのがいいと思っています。
また将来的には、シナリオ作成できる社員を育成して、シナリオ本数も増やして、若手社員の残業時間の 削減に繋げていきたいと思っています。
※2021年4月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。肩書き・役職等は2021年9月当時のものとなります。 ※「WinActor」は、NTTアドバンステクノロジ株式会社の登録商標です。
インタビュー中の取り組みに関して詳細を知りたい方は上記よりお申込みください。
実際にRPAで自動化した「オオタカの巣、観察記録動画ダウンロード作業」のシナリオ動画もご覧いただけます。
RPA導入のきっかけとなった、オオタカ観察のご様子を、是非動画でご覧ください!
※お申込み後、弊社イベント出展時の講演動画が全てご視聴いただけるURLをお送りいたします。
※大変申し訳ございませんが、同業者の方のお申込みはご遠慮いただいております。予めご了承ください。